SVL雑記 序章4

 

前回、パラダイムは現実についての一つの側面・視点であること、

思考の枠組み、技術、価値観の集合体であること、

科学者は、共通のパラダイムのまわりに現実の捉え方を構築すること、

20世紀から21世紀にかけパラダイムが徐々に転換しつつあることを

The Systems View of Life(カプラ・コースのテキスト)に基づき紹介しました。

 

パラダイムは固定的なものでもなければ、一つの時代に一つだけ存在するといったものではありません。

その時代に支配的な影響を及ぼすパラダイムは、歴史を通じて揺らぐようにシフトを繰り返しています。

 

またパラダイムそのものに良し悪しがあるわけでもありません。

大切なのはパラダイムとその影響に気づくこと。

 

なぜって?

そうすることで、パラダイムの無意識の影響から自由になり、必要に応じて目的やニーズにより適したパラダイムを選択することが可能になるから。

そして、そのためには歴史を通じて、実際どんなパラダイムがどんな影響力を持ち、どう転換してきたのかを知っておくのが多分役に立つ。

 

というわけで、今回もざっくりと紹介です。

 

古代ギリシャから今日に至るまで、少なくとも西洋においては、哲学と科学のパラダイムが唯物論的世界観と全体論的世界観を時には拮抗しながら行ったり来たりしてきました。そんなパラダイムのゆらぎと並行し、科学もまた、徐々にわたし達に馴染みの深い形に発展してきました。

 

紀元前600年の古代ギリシャ哲学では、the ultimate moving force and source of all life(万物を流れる究極の力である全てのいのちの源)は、the soul(魂)と同一視され、the breath of life(生命の呼吸)に例えられました。

 

魂を意味するギリシャ語のpsyche(プシュケ)やラテン語のアニマ(anima)も、基本となる意味は“breath”(息)です。

 

この万物を流れる力、死に際に肉体を離れるいのちの呼吸、と非常に関係の深い概念がknowing(認識すること、知覚すること)でした。

 

古代ギリシャの哲学者にとって、the soulは万物を流れる力といのちの源であると同時に、認識し知覚する存在でもありました。

宇宙全体の基本的特性は部分にも現れる、というギリシャに元々あったマクロコスモスとミクロコスモスの世界観。

この世界観があったことから、個々人の魂は宇宙全体を流れる力の一部と解釈されました。同じように、個々人の認識・知覚は、宇宙全体が認識し知覚するプロセスの一貫であると捉えられました。プラトンは、これをanima mundi(アニマ・ムンディ)つまり”world soul” (認識・知覚する世界魂)と呼んでいます。

 

つまり、宇宙全体を流れつくる力がわたし達一人一人の中を流れつくっている。そして、わたし達一人一人が認識したり知覚したりすることを通して、わたし達が存在する宇宙全体そのものが認識し知覚したりするといった感じでしょうか。テキストのこのくだり、東本願寺の「今、いのちがあなたを生きている」を彷彿とさせます。

 

さらに、ハワイ大学のベッカー博士によると、ハワイ語のmana(マナ)は、全てのものに宿る生命を与える根源的な力を意味します。同時に「息」そして「精神・意識」(mind)も意味するそうです。またmanaとはsoulのことであり、soulはall minds(全ての意識)も意味します**。

 

この類似性に個人的にはとても興味を惹かれます。

特に古代ギリシャと古代ハワイの宇宙観の類似性にはびっくり。モラという刺繍で有名な中米パナマのクナ族の村を訪ねたときにも、古代ギリシャのシンボルと形も意味も同じものを見つけ、びっくりしました。が、これはまた別の機会に。

 

さて、物質としての宇宙の基本構成要素を探求する試みは、というと・・・

紀元前5世紀にエンペドクレスが物質世界は火・土・水・空気の四大元素でできていると唱え、そのおよそ50年後にデモクリトスが世界は原子でできているとする原子論を唱えました。この原子論は、エピキュラス(紀元前341—270年)がさらに発展させ、全ての事象は原子の再構成によるもので、その動きの背後に何らの目的はなく、神の意思もないと唱えました。

 

一方、科学そのものについては紀元前4世紀にアリストテレスが、それまでに蓄積された科学的知見のすべてを統合し体系化。西洋科学の基盤を築きました。

 

その後の細かい流れをざっくりまとめると・・・13世紀にトマス・アキナスが、アリストテレスの科学と中世キリスト教神学を一つにまとめます。その後人間の行動すべてを宗教的観点から理解する中世のドグマへの反動のように、15世紀初頭から16世紀末にかけてルネッサンスが花開き、人間の知性に焦点が当たります。これが、合理的で科学的な思考様式の登場へ向けた土壌を育む契機となりました。

 

ところで、現在の科学的思考様式は、一般的な科学史ではガリレオとともに登場したとされることが多いようですが、カプラ博士によると、それはレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452−1519)によって生まれました。

 

ダ・ヴィンチは、自然から学ぶべく、その有機体の形、質、変化のプロセスといったものを研究しました。その研究の仕方が科学的だというのです。なぜなら、その研究は、系統立てた観察、論理の構築、そして数学を用いて行なわれていたからです。

 

5.「パラダイムはゆらぐvol.2」に続く。

 

**Catherine Kamala Becker, Mana Cards: the power of Hawaiian wisdom (Radiance Network Inc., 1998) p. 17-18, p. 30.

 

SVL雑記 序章4

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